僕がその夜に見たものはきっと世界で一番美しく

 

 

 

 

育館の

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その晩僕は学校に忘れ物をしてしまった。

とりあえず、学校への侵入を試みた。

案外簡単。こんなものなんだろうか、学校って。うん。所詮そうだな。

さて問題はどうやって校舎に入るかだろう?そんなの糸も簡単にやり遂げてやるさ。

なんとこの学校は無防備にも過ぎるのだ。

体育館の扉には鍵がついていない。そして体育館は校舎へと繋がっている!

よしきた。これだ。

早速体育館へと足を急がせた。

もうあたりはとっぷりと闇に浸かっていた。

あぁ、夜か。

運がいいというか、今日は両親が旅行に出かけていて居ないのだ。

少しぐらい夜の学校を満喫してもいいだろうか。

僕は夜が好きだった。

闇も好きだ。

暗いと落ち着く。

昼間の騒がしい学校と打って変わってこの静寂かつ闇を帯びている世界。

なんて素敵なんだ。

清々しい気持ちで鍵の掛かってない体育館の扉を開く。

その瞬時に僕は唖然し、見とれる。

 

 

 

 

 

 

綺麗な月の光を浴びて、椅子に腰掛けている黒髪の人形。

 

 

 

 

昼間には無く今ある・・・異物。

その人形は月の光で輝いていた。

窓越しで外を見ているかのような姿勢で。

人形はゆっくりとこちらを向いた。

・・・ん?

何で人形が動くんだ。非現実的だった。

ますます目が離せなくなる。

そして人形は口を開いて、

「貴方は誰?」

凛としていて透き通るように綺麗な声だった。

この人形の歌声を聴いてみたかった。

「僕は、この学校の生徒だ。」

そう、と人形は笑い再び外を見る。

僕はこの人形を深く深く知りたくなった。

「・・・あのさ」

自分に話しかけてるのか、と尋ねてきたので頷く。

「なんで君はここにいるんだい?」

唐突な質問で戸惑うかと思ったけど戸惑う所かさらりという。

「ちょっと逃げたくなっちゃって」

苦笑いをする。やっぱり人間じゃなくないんだろうか。

やっぱり興味本位で聞いてみたりする。

「君って人間だよね?」

「・・・うん。それはそうでしょ。」

少し戸惑ったような仕草をしてから答えた。

「ねぇ、それよりこっちへ来てよ。」

僕は従う。体育館のステージ裏に階段があるので

そこから彼女の居る所に行くことにした。

少し不安定な足場だったけど壊れる様子はないので一先ず安心だ。

そして彼女の傍に行く。

「はじめまして、私は雪音。雪の音と書くの。貴方は?」

「僕は・・・・・・ぼく・・・・は?」

名前ってなんだっけ?

ここの生徒でもなかった気もする。

「・・・っ!」

頭が痛くなった。彼女、雪音は心配して声をかけてくれた。

「大丈夫?具合が悪いの?」

「う・・・ううん。悪くは無いんだけど、突然頭痛がさ。」

はは、と雪音が心配しないように笑ったつもりが逆効果だったらしい。

「顔色悪いわよ。ここに腰掛ける?」

そういって隣にある椅子を示す。

お礼を言って僕は座る。学校の市販のパイプ椅子。

硬いな。でもパイプ椅子って何だったっけ・・・・?

変なことを考えてしまうので何か話題を探る。

「こんな所で何をしてた?」

それを聞いた彼女は少し暗い顔をした。

それから少し顔に微笑をうかべると彼女は言う。

「体育館に居たかったの。」

「どうして・・・?」

彼女は僕の顔を見て少し悲しげな顔をした。

それでも彼女の顔から微笑は消えない。

「私・・・余命一日なの。」

それを聴いた瞬間絶望した。

今まで『余命』と聞いた事があるとすれば一ヶ月とか数年とか。

けれど・・・一日って?そんなのって・・・

哀し過ぎるだろう?

残酷で酷すぎる。

「貴方になら話せるきがする。」

彼女はまた笑った。

逢ったばかりの彼女が逢ったばかりの僕に何を明かすというのだ。

でも僕はそれをすべて受け止めてやろうと思えた。彼女のためなら。

そんな気がした。

彼女は窓の外の月を見てすべてを明かしてくれた。

「私、何かの薬で実験されてるの。その薬は私の体の中から徐々に蝕んでいく。一つ、また一つと私の体の機能は停止していく。

今も臭いが判らないの。それに足ももう動かない。

でも良かった。動けなくなる前に体育館に来れて」

「どうしてそんなに体育館になんか来たかったんだい?」

「私この薬を投与される前までバスケをやってたの。あの頃は楽しかったなぁ・・・。ふふ、皆で騒ぐのが好きだった。」

あぁ、騒ぐのが好きだなんてよほど良い生活をしてたんだろうか。

その時異変が起きた。

彼女が痛そうに眼を抑えていた。

「どうか、した?」

僕は少し顔を覗き込んで言う。

そこには先ほどと全く変わらない彼女が居た。

ただ一つを除けば。

外見からしてはきっと全然解らないけれど。

眼が、眼に光が映っていなかった。

その眼は何を見つめるもなく。

きっと常に続く闇を見つめてるんだろう。

眼が見えなくなっていた。

笑顔は消えていなかった。

「平気だよ。まだ貴方が見える。」

彼女はまた、微笑む。

「・・・そうやって一部の機能が停止してくんだ。」

「うん。でも怖くないかな。」

「・・・どうして?もしかしたら君は後数時間で死ぬのかもしれないんだよ」

自分で言っときながら物凄く悲しくなった。

胸が痛かった。

それでも彼女は・・・微笑む・・・

僕は耐ええられなくなった、多分。

「なんでそんなに笑ってられるんだよ!!」

少し怒り交じりで僕は、言う。

僕は初めて彼女の顔から笑顔が消えたのを見た。

笑顔じゃなくともとても綺麗だったけど、今にも消え入りそうなほどだった。

でも本音だったのだ。

後少しばかりの命で、もしかしたら一分後に死んじゃうのかもしれないのに。

「・・・雪の音って聞こえないよね。」

「・・・?」

「ただ静かに空から落ちてきて地面に消えていく。」

「・・・・・・」

「怖かったの。そんな風に消えちゃうのかもって思った。」

「・・・・・・」

「だから笑顔でいれば何かが変わると思った。」

「・・・・・・」

「でも何にも変わらないのね。誰にも愛されず消えてゆくの。」

「・・・・・・」

「雪でさえ塊になれば皆に愛されるとても綺麗なモノになれるのに、私は変われない。」

「それで独りで寂しく死ぬんだ。」

「・・・えぇ。」

「僕は君が死ぬ時にはきえた方が良いのかな?」

「・・・・・・」

彼女は俯く。

僕は何を・・・っ!ぼく?ぼくは・・・「僕」だったっけ?

ここに本当に忘れ物をして来たんだっけ・・・。

・・・・・・あぁ、確かに忘れ物だったな。

空を見上げれば分厚い闇が覆っていた。

その闇を突き破って星と月が消極的に輝く。

「君の耳が聴こえるうちに言い忘れていた事を言いたいのだけれどいいかな?」

「・・・何?」

「何で君はそんな薬を自分にうったんだ?」

彼女は顔をガバッとあげて僕の方を向く。

だけど少しずれていた。

何せ眼が見えないんだから。

けどその顔は明らかに僕に訴えていた。

「なんで・・・?」

「思い出しちゃったから、かな。」

一瞬彼女の眼に涙が浮かんだように見えた。

実際そうではなかったのだが。

「・・・・・・私、生きてるのか実感湧かなくって、バスケやってったっていうのも嘘。

元から体弱かったし・・・存在してるのかも自分で解らなくなっちゃって。

だからこうやって『死』を味わえばあぁ、生きてたんだって思える気がして。」

驚きの返答だったのかもしれないけど

全てを思い出したのだ。

もう『僕』ではない。

「あと一分後に君は耳が聴こえなくなる。それから三十秒後声が出なくなる・・・これから先も聞きたい?」

「・・・いいわ、もう聞きたくないもの。」

「ふぅん。じゃ最後に言い残したことでもどう?」

「言い残したことか・・・」

少し思い悩む表情を浮かべる。

そして彼女は耳が聴こえなくなった。

彼女の耳には星が煌く音も、蝉が鳴く声すらも届く事はない。

「・・・耳が聴こえなくなったみたい。あと三十秒・・・・。」

相槌をうっても聴こえてないだろうから返事はしなかった。

声が出なくなるまで二十秒、十五秒、十秒・・・

七秒、六秒、五秒、四、三、二・・・

「貴方に心から逢いたくなかった。」

一。

そして声は失われた。

残る機能は脳と心臓。

どっちが先でも死ぬのは確かだ。

哀れに思うこともなくただ見つめていた。

そしてもう声は届かぬその耳に最後の言葉をかけた。

「俺は、多分・・・愛してた。」

複雑だった。

もう動かない彼女は静かに月の明かりを浴びて座っている。

黒い、ドレスっぽい感じの服を着ていた美しい少女。

尊い命はたった今失われた。

 

 

 

 

 

 

 

そして体育館を去る。

彼女を置き去りにして。

 

+++++++++++++++++++++

外に出れば黒ずくめの人物が居た。

彼女見たいに美しい人では無かった。

というか男だった。

そして話しかける。

「よぉ、どうだった?」

「・・・・・・・・・。」

「・・・まさか忘れられてんの!?オレ。」

「や、ちょっと待て。思い出すから。」

「うわーまたかよ。特異の記憶障害かぁ?」」

記憶障害?だからか、先ほどまで記憶があやふやなのは。

とういことはこいつは確か・・・。

「お!思い出したか。良かった良かった!オレまで忘れられてたら正直ショックだったぜ」

名前は思い出せないが、共に行動をしていたな。そういえば。

ちょっとお気楽な表情だったが俺が一声喋りだすと真剣な顔つきになった。

「・・・確かに薬を作ったのは俺だったな。」

「あぁ。」

「どうして彼女の手に渡ってしまったんだろう。」

「・・・それも忘れたのか?」

「?どういう・・・?」

どうやら俺の記憶障害とは、他人の意識、性格が移入してしまうらしい。

さっきまでのも他の誰か。

今まで何回か他の誰かだった。

多重人格とでも言うのだろうか。

「まさか、彼女に渡した時のお前は『お前』じゃなかったのか?」

ドクン。

心臓の鼓動がゆっくり大きく動いた。

そんなこと・・・あるわけない。

俺が彼女に渡した?

また他の誰かが・・・?

彼女を愛していたのはきっと本当の自分だ。

いや、他の誰かだったっけ?

「・・・いつからそうなっちまったんだよ」

知らない。

昔って何だった?

どうやって過ごしてた?

何をして誰を愛してた?

記憶がない。

あれ?

それじゃぁ・・・

 

 

 

本当ノ俺ッテ     何?

 

 

 

手が震える。

痙攣かもしれない。

自分が解らないことがこんなにも恐ろしい。

ふらふらと覚束ない足取りでもと来た道を戻る。

体育館へ。

彼女を置き去りにしたあの場所へ、足を踏み入れる。

さっき入った時とはまったく別の心境で。

彼女が居た場所を見上げる。

椅子の上で眠っているように座る少女。

だけれど生きてはいないんだ。

彼女の傍に行く。

隣に行き、顔を覗き込む。

相変わらず青白い顔だった。

死んでいるのに美しさは衰えていなかった。

たとえ今までの自分が彼女を愛していなかったとしても

今は愛している。

こんなにも

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから殺したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

+後書き+

少し意味解らん感じで仕上がりました。

登場人物は多重人格の殺人鬼と殺人鬼が愛した少女と他の殺人k(笑

雪音が最初の方で多重人格の殺人鬼と逢いますが

もとは知り合いだったけれども彼が多重人格と知っていたので

初めてあったかのよう演技をしたのです。

雪音は愛する故、自分は彼の邪魔だと思い込み

雪音を愛する殺人鬼のほかの人格の時に薬を手に入れたのでした。

一方殺人鬼はと言いますと、同じく雪音を愛していました。

故に殺した・・・と思い込んでいます。

これまた厄介な殺人鬼で人格がぐるぐる変わります。

他の誰かになってしまうのです。

この話の中では何度も人格変化起きてます。

何処で起きているかは読んでいらっしゃられる貴方自身が想像してください。

面白く仕上がっていたらいいなぁと思います。

 

 

 

 

僕は僕。君は君?誰なんだよ

 

 

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