その日、朝なんてこなければ良いとずっと思ってた。
1、ため息
朝、目が覚めたときからなんだかもやもやしていた。
その時は外が雨だったからなのかもしれなかった。
パジャマのままダイビングへ行って
コーヒーを炒れて、椅子に座って、新聞を広げて。
いつも、どおりだったはずだった。
今日も昨日のようにいつもどおりで平凡な日だとばかり思ってた。
新聞の記事を読んで絶句した。
手からするりと、コーヒーカップが落ちた。
がしゃん、という破壊音と水音が静かに響いた。
こんなこと、ありえないだろ?
『10月某日、●●高速道路でバスがハイジャックされた。死亡者一人。軽傷5人。容疑者は現在逃亡中・・・』
内容は一切普通だったんだ。
自分に関係がなければ。
関係ないはずがなかった。
『死亡者、桜埜 潤祈(18歳)。頭を銃で撃ちぬかれ、即死で・・・』
いつもなら、ただため息をついてくだらないと読む新聞なのに。
今日ばかりは目が離せなかった。
時間が刻々と過ぎて行くことなんて気にも留めず。
その記事だけを見つめていた。
言葉が出ない。出なかった。
ただ奇妙な笑いが零れるばかり。
やっと発した言葉は枯れるような。
「は・・・嘘、だろ?」
やるせない気持ちだけがつもる。
・・・なぁ、嘘だって言ってくれよ・・・?
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